2013年9月30日月曜日

Gender Equality for Men (男性にとっての男女共同参画)

先週金曜日、早起きして埼玉県の国立女性教育会館(NWEC)に行ってきました。

NWECは毎年、国際事業として、アジア太平洋地域のジェンダー平等推進担当官や研究者やNGOリーダーに向けた2週間の研修を実施しています。

私もここ数年、各国からの研修生が自分達の国の現状と取組みついて報告し、議論するセッションのアドバイザーとして出席しています。

私の役回りは、
① それぞれのプレゼンを聴き質問&コメントすること
② 現状・課題・事例を整理・集約すること
③ ②をベースにいくつかの論点を導き出し、それに沿って議論をファシリテートすること
です。

これまでのテーマとして、ジェンダー統計、災害と女性、女性に対する暴力が取り上げられました。
今年は、Gender Equality for Men(男性にとっての男女共同参画)です。
ジェンダー=女性問題ではありません。どの社会にも、「男性のあるべき姿、男性の果たすべき役割」といった社会規範があります。「強くなければならない」「腕力がなければいけない」「恐れてはいけない」「負けてはいけない」「弱音を吐いてはいけない」「妻子を養って一人前」「経済力があってナンボ」・・・・。社会によって違いはありますが、ボトムラインの「強さ」というキーワードは共通しています。

とはいえ、生物学的に男性であっても、こうした「あるべき姿」的なジェンダー規範に皆が皆あてはまるわけではないし、あてはめる必要も無い、ましてや、職業や生き方などの人生の選択肢が生物学的な性別によって制限される必要は無いと思います。ところが、社会をよーく見てみると、法律や制度が「あるべき姿・果たすべき役割」を前提にしていたり、メディアや人々の意識にも反映されていたりします。

映画「男はつらいよ」の寅さんは、「結婚して、働いて、妻子を養って一人前」という(昭和の)「男性のあるべき姿」に反した生き方をしています。社会規範に縛られずに生きる寅さんの視点を通して、まっとうな人たち、まっとうな生活が時に滑稽に描かれているわけです。その寅さんに、甥っこの光男はとても懐いていて、思春期になると人生の相談事なんかもするわけですが、親戚や身近に「(社会から見て)あるべき姿」ではなくとも、自分の責任で自由に生きている大人がいるって実は大切なことなんだよなぁということにも気付かされます。

話はそれましたが、日本にも実は男性にはたくさんの「規範」があり、まさに「男はつらいよ」と言いたい人もたくさんいるのではないかと思います。特に、自殺者の数やその理由における男女差・男女の違いは非常に顕著ですし、震災後に関連死されてしまう方には男性が多いのです。2008年に非正規雇用者の問題・貧困の問題が可視化されましたが、そのきっかけとなった年越し派遣村に集まったのは殆どが男性でした。一億総中流と言われた時代にも、ずっと、シングルマザーと高齢の単身女性に貧困は集中していたのに、なぜ、年越し派遣村には圧倒的に男性が多かったのか・・。また、若い世代の未婚化が進んでいると言われていますが、男性に関していうと、年収によって結婚する・しないにはっきりと差がでています。震災後、妻を亡くしてシングルファザーになった男性たちは、シングルマザーになってしまった女性たちよりも非常に厳しい経済的苦境に立たされてしまいました。

これらの背景にあるのが、男女のあるべき姿という価値観、それに基づいた男女の役割分担・分業や法律・制度・政策、つまりジェンダーの問題です。
「ジェンダー平等社会」「男女共同参画」というと、女性の地位向上・女性の社会進出と狭義に捉えられがちですが、そうではありません。ひとりひとりが自分の意思に基づいた選択ができる社会、男性と女性が平等に教育を受け、心身ともに健康で、経済活動に参加し、家庭内・地域・社会・国等あらゆる場での意思決定に参画する、男性と女性が平等にあらゆる責任を果たす、それを可能にする社会をつくっていこうという概念です。

ということで、国際社会でも、「男性にとってのジェンダー平等」というのは重要なテーマになっており、いろいろな取組みが行われています。

今回、研修に参加したのは、モンゴル、ベトナム、フィリピン、カンボジア、タイの5か国から9名。

各国の報告は、
○ 国の概要 (面積・人口から特産品まで)
○ 国内のジェンダー平等推進における基本枠組み(基本法や基本計画や推進機構など)
○ 国内のジェンダー平等推進の進捗状況
○ 男性のジェンダー問題
○ 取組み事例と成果
○ 今後に向けた課題・提言
という共通フォーマットで行われました。

事例として報告されたのは、
○ 男性向けのワークショップ
○ 若い男性向けのgood men キャンペーン (DVや女性に対する暴力の防止や、家庭役割の分担を奨励するような内容が中心)
○ 男子学生の中退に歯止めをかけるためのキャンペーンや取組み
○ イスラム教の宗教リーダー・男性とのパートナーシップによる、地域の女性リーダー育成事業 
○ LGBT(セクシュアル・マイノリティ)に関しての意識啓発
など。

大まかに言うと、
○ DVや女性に対する暴力の防止
○ 無償労働(家事・育児・介護・看護等)の家庭内での分担
○ (宗教リーダー等、影響力のあるリーダーに対し)女性のエンパワーメントが進むことによる地域へのポジティブ効果
の3点における意識啓発やトレーニングが多いようでした。

また、共通の課題として浮かび上がってきたのは、
○ 世代間ギャップ (どこの国でも若い男性は、男女平等意識が強いし、家庭内の役割分担にも積極的なので、ワークショップやキャンペーンの効果も高い。難しいのは年配の男性。しかし、この人たちが「意思決定ポジション」を形成しているので、無視するわけにはいかない)
○ 地域間ギャップ (どこの国も、都市部と農村部では、大きな違いがある)
○ 多くの取組みが「女性視点中心」で企画されており、男性の参画が限定的 
という点。

そこで、ディスカッションでは、
① 意思決定ポジションにいる男性向けには、どのような「ロジック」「メッセージ」が効果的か?
② 男性の当事者意識を喚起するか?男性にとってのジェンダー問題とは?
③ ジェンダー平等推進は、男性に対する「脅威」ではなく、男性の「選択肢の拡大」も意味しているということを理解してもらうためには?
といった論点に絞り込み、話し合いました。

☆ ☆ ☆ ☆
各国の報告やディスカッションで出てきたことから、いくつかメモ。

○ 若い男性(ティーンネージャー等)に向けたGood Man Passportが面白い!良き男性像(暴力を振るわない、家庭役割・経済役割を分担する、物事を一緒に決めるなど)を表した写真をふんだんに使ったパスポート。わかりやすい。

○ モンゴルでは、「男子教育」が大きなジェンダー課題。教育や保健・医療は「女性の職業領域」とされているので、初等教育から大学教育まで教員は女性の方が圧倒的に多い。男子学生のドロップアウトを減らし、進学を奨励するには、男性教員を増やすことが大きな課題。(もともと、女性=知的職業、男性=肉体労働を中心とする職業というジェンダー分業があるのと、公務員としての教員の仕事はあまり給料が高くないので、男性が就きたがらないという背景要因もあるとのこと。)フィリピンでも、男子学生のドロップアウトが多いが、主要因は、男子が学校を辞めて賃金労働に就き、家計を助けることを求められるから。)

○ 農村地帯のモスリム・コミュニティで女性のリーダーシッププログラムを始める際、まずは宗教リーダーとの対話を含め、男性たちの参画を促した。最初は「は!?」というリアクションだったが、「女性の人権が守られて、女性が自立することは、このコミュニティの発展に大きな効果がある」という話をしたら、協力的になった。(これは本当によくある話。まずは長老や宗教リーダーが第一関門だが、ロジカルに入念に話をすれば、たいていOKになる。JICAがイエメンの女子教育で大きな成果をあげたのも、まず、長老・宗教リーダーたちを忍耐強く説得したから・・。女の子や女性が教育を受けたり、経済力を付けることによるメリットは直ぐに目に見えて出てくるので、そうすると周辺地域も感化され、同様の取組みを求めるようになるケース多し。)

○ 「男性=稼ぎ手、女性=稼ぎ手プラス無償労働」というジェンダー役割分担に加え、アジア地域では「家父長制的な規範(の名残)」が共通のジェンダー課題。

○ 男性のジェンダー問題としてあげられたのは、「疎外されるシングルファザー、男性のリプロダクティブヘルスの軽視、男性が仕事や経済活動で直面する困難がDVの主要因の一つ、社会や家族による経済的成功・社会的成功への高い期待、家の稼ぎ手としての重圧」など。(6月にプラン・ジャパンの視察で訪問したネパールでもそうですが、男性が稼ぎ手として都市部やインドへ出稼ぎに行かざるを得ないのも稼ぎ手役割があるからで、出稼ぎ先で怪我をしたり病気になる男性も多く、父親という大黒柱が倒れた時のセーフティ・ネットがなく、それが児童労働の大きな要因でした。農村地帯の女性の経済的エンパワーメントプロジェクトの効果は、女性だけにとどまるのではなく、夫が出稼ぎに行かなくても良い、子どもが学校に行ける、夫が倒れても子どもが労働することなく教育を受け続けられるなど、家族全員の選択肢を広げるのだということがデータにもはっきりあらわれていました)

現在、どこの国も「試行錯誤」の段階です。
○ 男性のフィードバックをしっかり集め、分析・評価し、それを今後のワークショップやキャンペーンやアドボカシー(政策提言、意識啓発)に活かしていくこと
○ (ワークショップでも、キャンペーンでも)企画から実施、評価のすべてのプロセスに男性が関わるようにすること
○ このような多国間研修の次のステップとしては、各国の取組みの中で使った「ツール」「カリキュラム」「パートナーシップ事例」「効果的だったメッセージ・ロジック」などを持ち寄り、共有し合うこと。
が必要かなーと思いました。




さて、この研修の最終日である10月5日(土)の午後に、東京のJICA研究所でNWECによる国際シンポジウム「男性にとっての男女共同参画」が開催されます。研修生が作成した各国の「取組み」のポスター展示もありますので、このテーマに関心のあるかたは是非ご参加ください。

私も行きたいのですが、なんと、国際ガールズデーのメインイベント@国連大学とぶつかってしまいました・・・。残念です。




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